フェラーリ F430

かつてレースカーにクラッチが付いていた時代、故国の人気とは裏腹にラテン系ドライバーはレーシングチームにとって悪夢以外の何物でもありませんでした。恐ろしく速い代わりにミスシフトによってマシンに決定的なダメージを与えるのはラテン系のドライバーと決まっていました。

まあ、F1のオートマは実はこうした必然から生まれたのです。商売の上手いモンテゼーモロはこのラテンドライバー対策のオートマチックに「F1マチック」なんて子供だましのネーミングを施し、運転にちょっと自信のないミリオネアーの自尊心を傷つけることなく、2ペダルのエキゾチックカーを売りまくりました。

おかげさまで、精度の低い不愉快なギアボックスと重くて渋いクラッチから開放され、F430の操縦はいたって容易です。リアホイルにかかるトラクションはこの世のものとも思えぬエクスタシーをドライバーの腰に伝えてきます。手を添えたステアリングそのままに水平移動する快感は絶対に一度味わうべきでしょう。A級ライセンスなんていりません、僅かな浪費で購える最高の快楽がここにあるのです。

余談ですが、ジャン・アレジはツーペダルが嫌いだったそうです。なんと。。。